2017.11.23−12.24■Dribble 2 第二期

第2期・11月23日(木) - 12月24日(日) 「水田寛・池谷保 ・前川祐一郎」
   トークイベント : 12月3日(日)17:00〜18:30
   ゲスト : 清水 穣 
 

 「Dribble」は、画家・中屋敷智生の呼びかけから始まった、アーティストが主導する展覧会である。
“ドリブル”というその名の通り、中屋敷は自身と同じく京都を拠点にする水田寛にボールをパスし、さらに水田は松田啓佑へとつないで、三人の画家はチームを組み、昨年2月に小さな企画を立ち上げた。大阪にあった2kw galleryの展示室に並んだ三人の作品は、空間を明確に区切ることなく、かといって、互いに関連し合うモティーフや様式を見せるわけでもなかったが、三人の間に横たわる信頼や尊敬の念がその場を満たし、心地よい空気が流れていたのを思い出す。
 映像やインスタレーション、パフォーマンスが先行する現代美術の世界において、あえて絵画に取り組もうとするアーティストはどれほど強い意志を持っているのかと、つい想像を逞しくするが、彼らは愚直なまでに、ただ絵画という古くからある表現様式を愛し、その伝統に連なろうとしているだけなのだろう。その絵画への深い愛情は、キュレーターである私自身にも重なるものである。平面の上でしか生まれ得ないイリュージョン、絵具の色やテクスチュア、対峙しながら交信を続けることで結ばれる、見る者との親密な関係。それらは、やはり絵画にしかない醍醐味であり、いかなる時代にも人は絵を描き、絵を見ることで、何かを受け取ってきたのがよくわかる。想像力、創造力がともに貧困化した今だからこそ、絵画の意義はより真摯に問われるべきなのである。
 二回目の開催となる「Dribble 2」では、馬場佳那子、池谷保、前川祐一郎の三名が、初回の三人にくわわり、チームメンバーは6名に増えた。ドリブルはより激しくなり、盛んにパスを交わすのか。ひとつのゴールにみなで向かっていくのか、それとも思いもよらぬ方向にボールは逸れていってしまうのか。そうしたハプニングの可能性をも孕む「Dribble」の行く末を楽しみに待ちたい。
 

林 寿美(インディペンデント・キュレーター / 国立国際美術館客員研究員 )
 


 
水田 寛 / MIZUTA Hiroshi
 
1982 大阪府生まれ
2006 京都市立芸術大学美術学部卒業
2008 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
主な個展
2016 腰を折られた話たち (ギャラリー恵風/京都)
2015 やわらかいしかく (MEM/東京)
中断と再開 (アートコートギャラリー/大阪)
ぬかるみのたくらみ (同時代ギャラリー/京都)
2014 新しい島 (trace/京都)
歩調 (ギャラリーあしやシューレ/兵庫)
2013 レトロポリス (京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都)
主なグループ展
2016 3人の絵 (同時代ギャラリー/京都)
Dribble (2kwギャラリー/大阪)
2015 PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭 特別連携プログラム, still moving (京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都)
2014 なつやすみの美術館4 生きている! (和歌山県立近代美術館/和歌山)
2013 大和コレクションY -世界の手がかり- (沖縄県立美術館/沖縄)
2011 VOCA展 2011 現代美術の展望−新しい平面の作家たち (上野の森美術館/東京)
2010 MOTアニュアル2010「装飾」 (東京都現代美術館/東京)

 
 いつからか、シームレス(seamless)という言葉をよく耳にするようになった。縫い目や継ぎ目がないという意味で、下着などで縫い目がないものや、サービスや機能を継ぎ目なく一貫して利用できることなどを指す。また近頃「アニメは現実とファンタジーをシームレスに繋ぐ」といった具合に使われていたりする。どちらかというと、昨今シームレスであることは良しとされている場合が多いようだ。私の絵に縫い目があるのは、なにもこの風潮に逆らおうというのではなく、むしろ絵と他の物事、とりわけ絵と私の生活をシームレスに繋げる為に必要になってきたからだ。
 


 
池谷 保 / IKEYA Tamotsu
 
1982 静岡県生まれ
2006 東北芸術工科大学美術学部卒業
2008 京都市立芸術大学大学院修了
主な個展
2014 オールイン (ccc / 静岡)
2012 ドローイングの展示 (@KCUA / 京都)
2013 レトロポリス (京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都)
主なグループ展
2017 みえるような、みえないような (高浜市かわら美術館 / 愛知)
メイメイアート (茅野市美術館 / 長野)
2016 亀崎せこみち (亀崎町界隈 / 愛知)
アーツチャレンジ (愛知芸術文化センター / 愛知)
I`ve felt like this somewhere before (Mikawaya / 愛知)
2014 eeny,meeny,miny,moe|red (eNarts / 京都)

 
 最近は空間に点をうつ感覚で作品を作れたら良いなと思っています。前は意識せずに一直線的な制作をし、それでは飽きてしまうことに気づき、くねらせたり、入れかわらせたりしながら作っていましたが、限界を感じていたので、、、前者のような描きかたができれば幾分楽になると思っています。

 
前川 祐一郎 / MAEKAWA Yuichiro
 
1981 静岡県生まれ、愛知県在住
2007 愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻卒業
2009 愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画修了
主な個展
2017  drift (see saw gallery/ 愛知)
2016 evocative ( musico / 愛知)
2015 個展 (愛知県立芸術大学サテライトギャラリー / 愛知)
2014 Row Row Row Your Boat」/ TWS-Emerging 2014  (トーキョーワンダーサイト渋谷 / 東京)
2011 float on (U8projects / 愛知)
2010 個展 (木曜日 / 愛知)
2006 個展 (愛知県立芸術大学基礎デッサン室 / 愛知)
主なグループ展
2016 I’ ve felt like this somewhere before (ギャラリーミカワヤ / 愛知)
 corner (see saw gallery / 愛知)
2013 ワンダーウォール2013 (東京)
2012 MEM Wuppertal (ドイツ)
2011 密度I (アートラボあいち / 愛知)
 上の空 (万勝 S 館 / 愛知)
 THE SECRET 秘密 (スターネットジャパンビル / 愛知)
 woodland gallery 2011 (みのかも文化の森 / 岐阜)
2010 ワンダーシード2010 (トーキョウワンダーサイト / 東京)
2009  THE CAVE (名古屋市博物館 / 愛知)
2008  ドローイング交流展 (デュッセルドルフ美術アカデミー / ドイツ)
2007 TOKONAMECH’ 07 (元丸利陶管工場 / 愛知)

 
 たとえばうまく思い出せない記憶のように、それに導かれる断片的なことばはあるのに大事な部分はぼんやりとして掴みきれない。言葉で言い当てた時には大切なイメージはすでにどこかに逃げて行ってしまっている。 語弊を恐れずに言うならば絵はそれらしさのようなものをすでに内在していることを前提に存在しています。しかしながら 歴史的に紡がれてきたそれらしい遺伝子のようなものは少しずつ螺旋状に形を変化させて個々の絵画の成り立ち方において新たに生成されていくのです。