風能奈々 + 西太志
Nana Funo + Taishi Nishi
 
ある事件によって底に触れる “An incident touched the bottom”


2019年6月1日(土)- 6月23日(日)
12 : 00 - 19:00 [Last day - 17 : 00] 休廊:月・火・水


 
手書きでメモし 見たことない わからない 人間としての グラデーションの ある事件によって 底に触れる現実と虚構の 濡れ衣を着せられた 境界を自在に 手のひらの 象徴 副作用については 美の穴を埋める 時代の深層を 引用 美しき どこかの国の 語るせりふに 頭を打った 吐く息の ギザギザしている この子供らに 画質が鮮明な 水を差すような 模様の なぜか魚 ほほ笑む 怪物と

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 この度、京都を拠点に制作を行う風能奈々と西太志の2人による展覧会「ある事件によって底に触れる“An incident touched the bottom”」を滋賀県大津市にある2kw galleryにて開催いたします。
 
 風能奈々は、細い面相筆で繊細な線を紡ぐように描く油絵やアクリル絵具による点描画を思わせる立体的な描画、クリアジェッソやメディウムを用いた磁器やガラスを思わせる光沢のあるマチエールを作り出すなど、多くの技法を取り入れて独自の絵画を追求してきました。モチーフには少女や動植物、宝石、船、ときには内臓、記号や文字などが分け隔てなく同列に描かれ、積み重ねられた時間と反復により美しさだけでなく時に禍々しさすら感じる絵画を描いてきました。今回の展覧会では、さらにパネルに絵具の分厚い層を重ね、その上からハンダの熱で絵具を溶かして描く緻密でありながら、ある種暴力的な技法による新作を発表します。
 西太志は、フランシスコ・デ・ゴヤの「黒い絵」に影響を受けながら、現実の出来事と非現実の出来事が混ざりあった風景、木炭と黒い絵具の線で埋め尽くされた絵画、光の線がオールオーバーに飛び交う様、映画のワンシーンを切り抜いたような秘密めいた謎めいた情景を描いてきました。また、絵画と現実の距離についても考え、画像と物質性、絵画と立体との関係性にも関心を持ってきました。今回の展覧会では、それらに加え、西が近年テーマにしている“匿名性”や“旗”をモチーフにした新作を発表します。
 
 同年代の作家である2人は、同じ大学で絵画を学び卒業後も関西、関東を中心に様々な場所で発表を続けてきました。これまで共に展示する機会はありませんでしたが、今回の企画が決まったことで、あまり言及してこなかった2人の共通点や相違点を探りながら、お互いの作品、制作方法、思想について考察します。
今回、風能と西は本展のために〔共同詩〕を作りました。その詩の中から「ある事件によって底に触れる」という言葉が本展のタイトルになりました。
詩の制作方法は2人がそれぞれ新聞の中から気になった言葉を切り抜き、封筒に入れ、その封筒を交換、切り抜きを交互に出し合って作られました。(この方法は、詩人トリスタン・ツァラの「ダダの詩を作るために」を参考にしています)2人が選んだ言葉達がランダムに選択され並ぶことで、言葉は意味から切断され、2人の意識が無意識と偶然によって混ざっていきます。この共同詩は、今回の展覧会で2人の作品がどのように作用するのかを考える手がかりとなるはずです。2人の画家の現在の視点の融合を是非ご高覧ください。
 

風能奈々は1983年静岡県生まれ。京都在住。2006年大阪芸術大学芸術学部美術学科絵画コース卒業、2008年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程修了。主な個展として「線でつなぐ遊びと名前をつけること」(2016年、小山登美夫ギャラリー<同ギャラリーにて2009年、2012年、2014年にも個展開催>)、おもなグループ展として「VOCA展2009」(2009年、上野の森美術館)、「絵画の在りか」(2014年、東京オペラシティアートギャラリー)があります。
 
西太志は1983年大阪府生まれ。京都在住。2006年大阪芸術大学芸術学部美術学科絵画コース卒業、2015年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程修了。おもな個展として「NIGHT SEA JOURNEY」(2018年、GALLERY ZERO)、「黒い絵」(2016年、ARTZONE)、主なグループ展として西大志+矢野洋輔展「居心地の良さの棘」(2017-2018、8/ART GALLERY / Tomio Koyama Gallery)、「京芸 transmit program 2017」(2017年、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA)があります。