2016.1.25−2.6■幻想の質量 松井紗都子、森村誠、山本雄教

■展覧会
 について


 ■幻想の質量

2kwgalleryでは三人の作家による「幻想の質量」展を開催いたします。
それぞれの作家は我々の日常生活で流通する日用品を素材としてインス
タレーション作品を作っています。それは共通認識の見慣れた風景を彼等独自の方法で
作品化しています。

松井沙都子は2015年9月に開かれたGパルクの個展では日本の住空間をテーマに
身体と素材との関係を新たに解釈し直す作品を制作し、森村誠は新聞、雑誌、辞書、地図などの
情報媒体を修正液、カッター等で異物化する作品を提示しています。
山本雄教は点字ブロック、コメ等を日本画材で描き、2015年6月の京都・マロニエの個展では
一円玉を使ってギャラリー空間を蔽いつくしました。

彼等の作品を見る時、ある思いに取りつかれます。それは我々を支配する「共通観念」、
もしくは「共同幻想」というものです。現代の美術展に、すこし唐突かもしれませんが、
吉本隆明の『共同幻想論』が浮かびます。
国家・共同体についても、家族についても、また個人の在り方についても我々はどのような
意識に支配されているのか。吉本隆明はその構造を<共同幻想><対幻想><自己幻想>に分類し、
<共同幻想>は国家、地域、集団の意識、<対幻想>は家族、男女関係(同姓関係)、性、
<自己幻想>は個人の意識とし、それが複雑に絡み合って各自の世界が成立しており、
そして「原理的にいえば、ある個体の自己幻想は、その個体が生活している社会の共同幻想に
たいして<逆立>するはずである。しかし、この<逆立>の形式はけっしてあらわな眼にみえる形で
あらわれてくるとはかぎっていない。むしろある個体にとっては、共同幻想は自己幻想に<同調>
するもののようにみえる。また別の個体にとっては共同幻想は<欠如>として了解されたりする。また、
別の個体にとっては<虚偽>として感ぜられる。」(『共同幻想論』祭儀論)と言っています。
美術的表現が、国家から小さなグループまでの共同幻想に<逆立>した形の自己幻想としてみる
ことができるのではないでしょうか。そこには様々な自己幻想が共同幻想、対幻想と混じり合って
存在しており、森村誠、山本雄教の作品は或る意味、我々を取り巻く<共同幻想>を<逆立>した
形での表現と言えなくもありません。松井沙都子の住空間をテーマにした作品にも<対幻想>を
見ることができます。

しかし,これはあくまで画廊側の勝手な解釈であり、画廊の<自己幻想>かもしれません。
それにもかかわらず、快く出品して頂いた作家の方々に感謝します。
皆様方もご高覧頂きますよう、よろしくお願いします。





■松井 沙都子 Satoko Matsui
1981年生 
2015年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士(後期)課程油画領域 満期退学
【最近の主な個展】
2015年 『ブランクの住空間』(Gallery PARC / 京都)、
2013年『Blind Place』(TWS-Emerging 206、トーキョーワンダーサイト本郷)
【最近の主なグループ展】
2015年『Visual Sensation vol.6』(Gallery Den mym/京都府相楽郡南山城村)
2014年「はならぁと こあ」『在り処をみる』(工場跡/奈良)



■森村 誠 Makoto Morimura
1976年生 
2000年 英国国立ノッティンガム・トレント芸術大学芸術学部卒業
【主な受賞】
2012年公益信託 大木記念美術作家助成基金
【近年の主な個展】
2015年「Argleton -far from konohana-」 (the three konohana / 大阪)
2013年「キュレーターズ・アイ:森村誠 展」
    (山梨県立美術館・ギャラリーエコー/ 山梨)
2012年「HOPE PROJECT」 (Ethan Cohen Fine Arts / New York, USA)
【最近の主なグループ展】
2015年『TYPOJANCHI 2015』(Culture Station Seoul 284 / ソウル, 韓国)
2015年「第18回岡本太郎現代芸術賞」(川崎市岡本太郎美術館 / 川崎市)



■山本 雄教 Yukyo Yamamoto
1988年生 
2010年成安造形大学日本画クラス 卒業
2013年京都造形芸術大学大学院修士課程ペインティング領域 修了
【最近の主な個展】
2015年 『EXCHANGE』(gallery marinie / 京都)
2014年『one』(ギャラリー恵風/京都)
【最近の主なグループ展】
2015年『琳派400年記念 新鋭選抜展 〜琳派の伝統から、RIMPAの創造へ〜』
  (京都文化博物館)
2014年『TERRADA ART AWARD』優秀賞(T-Art Gallery/東京)