2016.11.7−11.19■原田要 展

■略 歴
「楕円の絵」
 
私は常日頃、木材を主材料として、色のついた立体作品を制作してきました。きのこのようであったり、花や壷のようであったり。さまざまなイメージの形態をしていますが、作品の主題はかたちが何に見えるかではありません。本来の展開としては、立体でありながらも絵画作品として考えています。
 
 このように、ずっと歪んだ曲面に描き続けてきたのですが、近年パネルの平面作品にも挑戦しています。立体であるのに絵画であると言いながら続けてきたからには、描くということが第一になるべきなのですが、立体としての要素が大きくなるにつれて、自分でも描く行為がおざなりになってきているのではないかと感じてきました。そのために、より積極的に描くことに集中するために、一度通常の絵画の形式に戻り、今回は楕円型の平面にも描いてみることにしたのです。
 
 具体的な行為は今までと同様、表面上を彫刻刀で彫り、そこへ絵の具を置いていくことの繰り返しです。。何かを描くというのではなく、そこにあるべき色を、絵の具という物質を定着させていく。はてしなく繰り返された結果が、画面全体の調和として結実する。あたりまえのことの難しさに直面しています。一筆ごとにがらりと変化する描くという行為。それは木を彫るという一方向的な行為よりも、可逆性と不可逆性の困難さに対峙し続けなければならないことに唖然とするのです。
 
ところで、今回楕円の作品を制作するにあたって、思いを馳せていたのは、大学時代の恩師でもある朝比奈逸人氏です。80年代に楕円上の変形パネルに、油彩で抽象の作品を描いていた作家なのですが、同時代の方でご記憶の方も多いかと思います。私自身、最も影響を受けた作家でもあるのですが、それは平面に筆と絵の具で真正面から立ち向かい、自己の判断で画面を決定していくという、至極当たり前の絵画作法を行い続けることの困難さを体現していたからでしょう。困難であるからこそ、実り豊かな作品も確かにあることを忘れるわけにはいきません。
 


 
原田 要
 
1961 大阪に生まれる
1988 大阪教育大学大学院修了
2001 「ヴァイブレーション―結びあう知覚」展 宇都宮美術館・栃木
2003 「たがやすように―熟す画面の4つのかたち」展 和歌山県立美術館・和歌山
2005 「ユートピアを探しに」 新潟県立万代島美術館・新潟
2008 「International Sculpture in Aglie 2008」トリノ・イタリア
2012 「みずぎわのぐるり」展 2kw gallery・大阪
2013 「起源を歩く|Jomonと原田要の庭」京都造形芸術大学・京都
2014 「まちなみアートフェスティバル丹波篠山」展 篠山市河原町商家群・兵庫
2016 「自然と美術の標本展」横須賀美術館・神奈川