2021.2.6-2.28 『loophole』東畠孝子

東畠孝子『loophole』

■会期:2021年2月6日(土)-2月28日(日)
■時間:12:00-19:00
月火水 休廊
 
loophole(「抜け穴」)という本展のタイトルが示すように、東畠孝子の作品では何者かが別の何者かを通り抜ける、という身振りが繰り返される。底の抜けた壺を貫くロープ、空のフレームを繰り返し横切るレーザー光、くり抜かれた本たちを収めるいくつもの本棚。たっぷりとした余白を含む作品群は、1つ1つのマテリアルを、そして作品を見る私たちをささやかな循環の中に取り入れ、捉えどころのない時間と空間に小さく親密な枠をつくる。その枠の中では、作家の手つきによって引っ張り出されたモノに宿る時間が、それを見る我々の時間と重なり交感する。彼女の作品は、この閉じた系に身をまかせる心地よさと、そこで露わになる小さな世界の危険な豊かさに満ちている。「私」を取り巻く小さな世界には、未知の何かに繋がる経路が無数にあると気づかされるのだ。 
 本展は、ネットオークションで偶然見つけたという古い油彩画や額縁から出発する。凝結された時間の重なりを1つ1つ確かめながら、作家は、絵画という窓を私たちに向かって開いていく。ループする不確かな日々を前に、東畠の試みは果たして何処に通じる抜け道となるだろうか。
 
(渡辺亜由美 / 滋賀県立近代美術館 学芸員)

 
人が介在することで半永久的に存在する「記憶」がある。
それらは共有されることで新しい居場所を得、今を生きている。
時に持ち主を失った古い記憶が乗り移り、私の体を生きているようにも感じる。
誰かの記憶をたどりながら、ふと私はあなたであり、同じ記憶を共有する一つの生命体なのかもしれないと思う。
今回の展示では古い絵や額縁などを用い、記憶の共有と転換、追体験することをモチーフに、作品制作を行う。

作家ステイトメント



 
東畠孝子
1984年生まれ、大阪府出身。2008年京都市立芸術大学彫刻専攻卒業、2011年 Gerrit Rietveld Academie(アムステルダム)陶芸専攻卒業。主な展覧会に個展「moon, river」(Galerie De Witte Voet、アムステルダム)、2013年「(almost) starting over」(コーポ北加賀屋、大阪)、2015年「Art Court Frontier 2015 #13」(ART COURT Gallery、大阪)、2017年「VOCA展 2017」(上野の森美術館、東京)などがある。