2014.9.1−9.13■形象の水際 Figuration on the Edge

■展覧会に
 ついて


形象の水際 Figuration on the Edge
2014年9月1日(月)〜9月13日(土)
淺野夕紀・大路裕也・久保友作・田辺由美子

企画:服部正(甲南大学)
紙にインクを一滴こぼすだけで、そこにイメージが生まれる。あるいは、木目をじっと見
つめていると、そこに顔が浮かび上がってくるような気がする。だとすれば、画家が苦心
して描き出す形象とは、一体何だろう。かたちが生成する場所とは、一体何だろう。そん
な疑問からこの展覧会は企画された。形が生まれるぎりぎりのところで研鑚を続ける美術
家たちが、そっと掬い取ったかたち、丹念に紡ぎ出したかたち、渾身の力で削り出された
かたちの如何に真摯なことか。形象の水際は、生と死がやり取りされる場所かもしれない。


出品作家(50音順)

淺野夕紀(あさの・ゆき)
2012年 個展「幽し」C. A. P. Y3(神戸)
2012年 グループ展「A as A project 2012 in 広州」53美術館 (中国、広州)
2012年 グループ展「冬の引き出し」Port Gallery T(大阪)
2012年 「西宮船坂ビエンナーレ2012 結‐Connection-」招待出品
2013年 「のせでんアートライン」招待出品
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「作品を生み出すということ、それは見えないものを見出す、
幽霊を見るような感覚に似ているのかもしれない」

ある画集に記されていた言葉です。
私の場合もそうなのかもしれません。

白紙の上を見つめ、染みのような影が、じわじわと浮かび上がってくるのを待つ。
若しくは、記憶の残像(余韻)を消え去る前に描き残す。そして、それがまた過去となる。

過ぎ行く微かなものたちと対峙した時、ふと、儚く、尊い感情を呼び覚ませてくれるのです。



大路裕也(おおじ・ひろや)
 2013年 グループ展「カソケキ+チカラ」ボーダレス・アートミュージアムNO-MA(近江八幡)
 2013年 グループ展「A Day in The Life」やまなみ工房 Gallery gufguf(甲賀市)
 2013年 「信濃の国 原始感覚美術祭2013 ―水のまれびと―」招待出品
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音楽が流れるとリズムに合わせエアギターをかき鳴らし熱唱、車両が後退する際はオーバー
アクションで誘導、休憩時には煙草を吸う仕草を真似て一服と、常に周囲を意識し自分自身を
演出している彼の自己アピールにひとつに作品制作がある。
モチーフは人物や動物等、様々で雑誌や画集を見てそれを模写する。
腕を組み、角度を変え構図を考える様も、一つひとつ丁寧に色を塗り重ねる筆使いも、 すべては
彼の演出、彼の美学なのである。
その美学から生まれる作品たちは、彼も予想がつかない全く別の色や形に変貌を遂げてゆく。
(アトリエやまなみ)



久保友作(くぼ・ゆうさく)
 2000年より個展多数:iTohen(大阪)、&'s Gallery(大阪)、millibar(大阪)など
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鼓膜から具体的な形状を記憶し抽象のまま平面へ転写されるたび
ヘレンケラ―が水を得たように一つの偏見を見出します
ここは采の目がヤラセに思うほど笑える座標、鱶を打ち上げたエッジ、
背後の氷瀑布から立体的な勘が網膜に映し出されて
更新する性格のままの慣性が展開するたびまるで
サイの彫刻とドローイングのように一つの軸を還します
そこは飛来したスペース、変態する平行、
世界を始めからスキャナし直すのかと思うほどに
気圧が変わる耳抜きのループ目かもしれません



田辺由美子(たなべ・ゆみこ)
 2007年 個展「Wert〜浮遊する価値〜」夢創館(神戸)
 2011年 個展「After Dish〜皿の後〜」應典院(大阪)
 2012年 「アートコート・フロンティア2012」招待出品
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「造形」を意識すると、違和を覚える。
抽出された魚骨の形、一つ一つの機能美、それだけで充分である。
それでも、かつて存在した有機体に思いを馳せながら、形造らせて頂いている。
瞑想するかのように。