2020.10.3-10.25 鮫島 ゆい「境界のミチカケ」

鮫島 ゆい 『境界のミチカケ』

■会期:2020年10月3日(土)-10月25日(日)
■時間:12:00-19:00(最終日17:00まで) 月火水 休廊
 

 

鮫島ゆいの絵は、眼前の事物や風景をそのまま再現したものではなく、ある種、抽象と言えるだろう。とはいえ生々しい筆あとをたどれば葉っぱや顔のようなものも見え隠れして、画面の中の世界が見る人の側にも否応なくはみ出し関わってくる。同時にシャープなベタ面やグラデーションはあくまでも2次元であることを主張し、イメージがぺったりと脳裏に貼りつくかのような触覚的印象をも残す。
近作の継ぎはぎのような画面は、まずは木片や造花など卑近な事物を組み合わせて立体物をつくり、描くことから始まるという。さらに実在しないイメージをも組み合わせ、またばらすことによって、画面は構成されてゆく。
きっかけとなる立体物を鮫島は依り代と呼ぶ。つまり、そもそも彼女が出発点とするモノは、現に目の前にありつつ、見えないむこう側にも関わっている。具象と抽象、実体とイメージ、日常と非日常、この岸とむこう岸。それぞれに境界の満ち欠けは違えども、そのどちらでもあるような断片を継ぐことで、画面は不確かなままに安定する。西洋絵画の王道の、観者と対峙し圧倒するような強さとはまた異なる、奇妙な強度がそこには生じている。
 

(江上ゆか)



■鮫島ゆい/SAMEJIMA Yui
 

1988年 京都に生まれる。
2010年 京都精華大学 芸術学部版画専攻 卒業。
 
個展
2018 『 √ root 』(2kw gallery・滋賀)
2017 『 鮫島 ゆい 展 punctuation 』(VOU・京都)
2016 『 Konohana’s Eye #11 鮫島 ゆい 展 5時の点は白と黒 』(the three konohana・大阪)
2014 『 Konohana’s Eye #3 鮫島 ゆい 展 中空の雲をつかむように 』(the three konohana・大阪)
2013 『 TWS-Emerging 2013 / pipe dream 』(トーキョーワンダーサイト本郷・東京)
 
グループ展
2019 『 韓日藝術通信2019 「温度 / 」 』(清州市立美術館別館ギャラリー・韓国 清州)
2018 『 日韓藝術通信part3 』(嵯峨美術大学・京都)
2017 『 韓日藝術通信part2 Cross point 』(忠北文化館森ギャラリー・韓国 清州)
     『 points of departures 』(Arena 1 Gallery・アメリカ カリフォルニア)
2016 『 ULTRA×ANTEROOM exhibition 2016 』(HOTEL ANTEROOM KYOTO・京都)
2015 『 liquid section 』(2kw gallery・大阪)
2013 『 シブヤスタイル vol.7 』(西武渋谷店B館 8階 美術画廊・東京)
2012 『トーキョーワンダーウォール公募2012 』(東京都現代美術館・東京)
 
『みえるものとみえざるものを繋ぐこと』
 
私は10代後半に病気を患い、その頃から身体と精神のバランスについて考えるようになったことをきっかけに、生命の形状や存在を探るための行為として制作活動を始めました。
模索する中で、日本人のルーツである神道に触れたことから、作品を制作することは、みえざるものに形を与える、祈りの行為であると考えるようになり、近年は絵画表現を中心に『みえるものとみえざるものを繋ぐこと』をテーマとする作品を制作しています。 プロセスとしては、先ず日々の中に溶け込んでいる「みえざるもの」に触れるためのツールとして、実在する何気ないモノどうしを組み合わせ、「依り代」としての立体物を作ります。
次にそれらをなぞるように平面として描き起こし、架空のモチーフを交えたあらゆるイメージを合成、解体しながら絵画として構築します。
五感によって構成される「実在」と、思考や感情による「架空」を画面上で混在させることで、「みえるもの」と「みえざるもの」、それぞれの境界を多面的・多角的に探ろうと試みています。
日本においては、古くから多神教の文化があり、アニミズム信仰に始まり、どんなモノにも霊魂や精霊が宿ると信じられてきました。
時に神として、時に妖怪やお化けとして、みえざるものに形を与え、特別なものとして祀る人々の精神性は、確かなものと不確かなものを繋ぐための行為であり、芸術の役割もまたそうであると感じます。
私は自らの作品を通じて、時代とともに変化はしつつも、現在を生きる私達にも脈々と受け継がれている日本人としての精神性や祈りの形を考察し、問いかけたいと考えています。