中屋敷智生 ばからくう
2024年6月1日―23日

ばからくう
中屋敷智生 | NAKAYASHIKI Tomonari

2024年6月1日―23日
13時―19時(23日 最終日は17時終了)
月・火・水 定休

この度 2kw gallery では、画家・中屋敷智生個展「ばからくう」を開催いたします。近年、中屋敷はマスキングテープを絵具と同様の画材・メディウムとして使用しており、コラージュや切り絵を彷彿させる独特のレイヤーとテクスチャーのある絵画作品を数多く発表しています。マスキングテープは時に線や色面として、また時に物理的なレイヤーとして画面に出現します。キャンバス上で渾然一体となった絵具・マスキングテープ・余白は図と地の関係を曖昧にし、われわれの網膜像に由来する視覚認識(知覚・直観・思考)がいかに不確かであり、また美しいものであるかということを顕在化するでしょう。この機会にご高覧いただけますと幸いです。

2kw gallery




中屋敷智生 | Nakayashiki Tomonari

1977年大阪府生まれ、京都市在住。2000年京都精華大学美術学部造形学科洋画分野卒業。07年とよた美術展'07 (豊田市美術館 / 愛知) 審査委員賞。国内を中心に、韓国、台湾、イギリス、フランスなどのグループ展やアートフェアに参加多数。アーティスト・ラン・オルタナティブ・スペースや、グループショーを主宰するなどの企画も手がける。
https://nakayashiki.wixsite.com/tomonari/cv

本展「ばからくう」は大型作品を中心に、ギャラリー全体を絵画で包み込むような空間として構成しています。この試みは、マーク・ロスコが 1958 年に「シーグラム壁画」を制作した際の、「絵画ではなく場を作った」という言葉にインスピレーションを得ています。ロスコは抽象表現主義の画家でしたが、フォーマリズムには傾倒せず、独自の神秘思想やギリシャ神話などの宗教的要素を作品に取り入れました。しかし、展示空間に「場」を生成するという考えは、ともすると絵画から自立性を奪い、それらを環境装飾へと近づけてしまう危険性をはらんでいます。絵画はそのとき、鑑賞者を自らの前に立ち止まらせる力を失い、むしろ彼らを止めどない歩行へといざなうことになるでしょう。わたしたちは、シーグラム壁画でロスコが目指した「場」という理想郷に、安易に足を踏み入れるべきではないのかもしれません。

それを踏まえた上で、わたしが志す「絵画=場」とは、絵画を矩形から解放する試みでも、絵画を現実空間から分かつフレームを否定するものでもありません。相容れない複数のレイヤー、色彩や線の戯れによって生まれる現象としての絵画は、やがて「場」を通して他者のまなざしに遭遇します。絵画と鑑賞者は異なる志向性を持つがゆえに互いの理解を求め合い、「見る/見られる」というバトンを絶え間なく交換し続けます。このことはやがて「見るもの/見られるもの」の境界を曖昧にし、主客をゆるやかに再統合し始めるでしょう。こうしてわたしたちのまなざしは、主体も客体も、存在も無も、それら全てを包括する場所としての「絶対無」、すなわち仏教で説かれる「空」の状態へと還元されていくはずです。わたしは、自らが生み出す「絵画=場」において、「場」から「空」が紡ぎ出されるプロセスに限りなく迫りたい。そして、また、えがく、ことが、できればと考えています。

中屋敷 智生


*アメリカの抽象画家、マーク・ロスコ(1903-1970)の「シーグラム壁画」と呼ばれる作品群は、50代半ばにして大家として認められたロスコが、1958 年春、マンハッタンに新しくできるシーグラム・ビル内のレストラン「フォー・シーズンズ」のために制作を依頼されたものです。最高級の料理と優れた現代アートを提供するというコンセプトのもとに、ロスコがレストランの一室の装飾を任されたのでした。しかし、ロスコが新境地を開いたシーグラム壁画は、その完成後にレストランで飾られることはありませんでした。なぜなら、オープン前の店を一足先に訪れたロスコはその雰囲気に幻滅し、契約を破棄したためです。こうして一度は行き場をなくした絵画群でしたが、うち 9 点が 1970 年にロンドンのテート・ギャラリー(現テート・モダン)へ寄贈され、1990 年には 7 点が DIC 川村記念美術館へ収蔵されることになりました。以来、このふたつの美術館ではシーグラム壁画のために一室を設け、常時公開しています。そのほか、ワシントン DC のフィリップス・コレクションにある「ロスコ・ルーム」、ヒューストンの「ロスコ・チャペル」を合わせると、ロスコの作品のみで出来上がった空間は世界に 4 ヶ所現存しています。