2022.2.3-12.20
抱握/Prehension

抱握/Prehension
高松威×山田真也 二人展


会期:2022/02/03(木)-02/20(日)
時間:12:00-19:00(最終日は17:00まで)
休廊:月・火・水曜日

2011 年に福島原発事故があり、町のためのアートプロジェクトが波及した。だが、10 年後の 2021 年にパンデミックが 訪れたこで、 プロジェクトは影を潜めた。災害は暴走を拡張しながら、日々ゆらゆらと明滅と抱握(1)を繰り返す。芸術 の焦点は人新世における art への批判に並行して、プロトタイプ的な"方法"の可塑性/心の可搬性の限界へと没入していく 気分が、顔を覆っていくように感じた。
 
環境が起因する枠組みという意味では、彫刻/工芸という近いようで隔たりがある学科の差は、山田/高松の思惟、判断に 大きく作用してきた。 その違いは方法と展示(≒実材)の関わり合いにおいて強く現れる。抱握過程に揺れ動く延長可能なか たちの制作を試みる。
 

(2022/1/25)

(1)キーワードにも選んだ「抱握」(prehension)とは、ホワイトヘッドの著書『過程と実在』に登場する概念であり、事物同士 の関わり合いにおいて知覚の外側で蠢く プロセスの重要さを示している。存在に距離をつくったことで昨今、様々な分野 に影響を強める「思弁的実在論」でも活躍する。
 


 

松威
 
鉄は、いま、ここに適応していく。
鉄の平板を作品として加工し、
有機的な線や表情を与える。
それは身体に依る加工と、
鉄が加工に抵抗する力の衝突で表れる。
一度変形した鉄のかたちは戻らず、
腐食され錆び落ち、地に戻るまで残り続ける。
表面の肌理は、作り上げたとしても、
鉄自体の化学的な現象に負けて消滅していく。
作品としてなにが残ったのか、
完全に地に還っていく前に。
 
2020-21 高松威個展 gekilin./大阪
2021 下町芸術祭 神戸市長田区/兵庫
2022 大阪芸術大学大学院工芸修士 修了予定
鉄の表面現象を用いた立体造形を展開する。
愛着、律動、野性、弱さなどを手掛かりに
汲み尽くせない「素材感/素材観」を試行する。
 


 

山田 真也
 
眼球は、湖に似ている。眼球を水平団すると、網膜は湖の水面となり、底にあたるのが中心窩で
ある。網膜とは多面的に乱反射する光を織りまとめる層と圏のことだ。底である中心窩は"孔"で
ありながら壁/茎となってゼリー状である硝子体の海を抱握 prehensionしている。眼球内(湖)を
往復する光/射の大半は雑多なものにぶつかり砕け、遅延と渋滞を繰り返す。そんな風に、湖の網
膜 が泡立ち機能しないとき、光は粒子となって孔に吸い込まれ、明るく濁る。私が買った五千円
の映写機が放つ光はそんな感じだ。
 
2020 大阪芸術大学彫刻コース卒業
2018 高松威・山田真也二人展 ギャラリーマロニエ
2021 KYOTOGRAPHIE KG+ ホテルアンテルーム京都
在学中は文化財センターで働くと共に、彫刻を通じて
肉、中心、埃、玩具、ニュータウン、復元、編集への関心
があり、制作に映写機や印刷を用いた。
大学卒業後、劇作家の岸井大輔が企画する上演論や、京
都の浄土複合で、戯曲、批評・編集等を学ぶ。坂口安吾や
新国誠一の〈具体詩〉に惹かれ、「言語‐箱‐飼育‐乾燥」と
いった連想、意味の転がり、遊技を設定する事で、自律し
た物やとりまく環境への揺さぶりを試みる。